このシリーズはこれで終わり!
未完なんだけど、個人的にはここで終わりでもいいと思う。
アリス編がなく打ち切り(失踪)で俺たちの戦いはこれからだエンドだけど、
その後のアリスと文月の関係を色々想像しながら楽しめるしね。
文月無双でアリスちゃんを屈服させてSMレズカップルになる妄想が捗るぜ。
■所要時間25分 ■約15787文字
アブっぽいやつ寄ってく?
「【エロ小説・SS】超上流階級のお嬢様しかいない女子高に転入したら想像以上のイジメが待ってた・・・6発目」開始
十歳になる頃には既にそれに近い感覚はあったが、その時の文月にはまだ、そんな性癖が
存在するということ自体、わからなかったのだ。文月の常識はまだ、自分の異常を押しとどめる
ことに成功していた。
それが完全に崩壊したのが小学校四年生。学校で飼っていた兎が殺されるという事件が起
きた時だった。
周囲の同級生がその光景の悲惨さに泣く中、文月は自分が悲しんでいないことに気がつい
た。いや、悲しまなかったわけではない。それよりも遥かに、強い感情があったのだ。
兎のうちの一羽にはまだ息があった。ただ生きているだけで、あとは死んでいくだけだろうそ
の兎を、文月は誰にも悟られないようにこっそりと殺した。
どうせ苦しんで死ぬのだから、早く楽にしてあげよう、と、そんな考えがあった。安楽死という
概念こそ知らなかったが、文月はやさしさから兎を手にかけたのだ。
それが直接的なきっかけだった。
死んだ兎を見た文月が得たものは、ひどく鬱屈した、しかし激しい――快感だった。
有瀬文月はこの時、自分が他者を虐げることに悦びを感じることを確信した。それを異常と
知っていながら、否定する気は起きなかった。
そして、文月が自分が『虐げる側』なのだと自覚したのと同じ頃。
伊勢宮アリスもまた、自分が『虐げられる側』なのだと、ぼんやりと自覚していた。
二人はこれまで何の接点もなく生きてきた。その二人が接触した時、アリスは虐げる側で、
文月は虐げられる側に立っていた。
アリスは変わりたいと考えている。虐げられて生きるのは嫌だった。いじめられる側に理由が
あるのなら、自分が変わることでそれを無くそうと思った。
文月は変わる必要はないと考えている。誰かを虐げながら生きるのは面倒だから、この感情
を抑えて生きようと思った。たまに溜まったものを晴らしていけば、それで済むはずだった。
そうしてどこまでも対照的な二人は――結局、すれ違ったのだった。
「ふぅ……」
自室の天井を見上げて、文月は小さく吐息をついた。一仕事終えた虚脱感は、一日置い
ても抜けきらない。やりつくした、というには些か控えめな遊びだったが、それでもここまで腕を
振るったのは久しぶりだ。使いもしないのに集めていた嗜虐コレクションが日の目を見たことも、
どこかうれしい気分になっている原因だろう。
いつもは大きい鞄にいれて隠してあるそれらは、ストレス発散として収集しているものだ。見
つかったら大変だが、入学のさいこっそり持ち込んだのである。
文月の父親である、ALICEグループ総帥有瀬王春は鞄の中身も文月の性質も知っている
が、何も言わずに彼女を送り出した。態のいい隔離だと文月は考えていて、それはあたってい
る。
大人しくしていよう、と思ってはいたのだ。中学の時に少しばかり『やりすぎた』せいで、文月
はここに放り込まれた。卒業するまで粛々と過ごそうと、そう考えてはいた。
「でも、しょうがないわよね……」
売られた喧嘩だ。しかも、文月は二ヶ月我慢したのである。
机の上にあるノートパソコンにちらりと目を向ける。開きっぱなしの液晶はスクリーンセイバー
に切り替わっていた。
思い出にするほど時間が経っているわけではないが、デジタルカメラのデータでも見ようかと、
文月の指がタッチパッドを操作する。が、フォルダを開きはしなかった。
部屋の扉を、遠慮がちにノックする音が響いたからだ。
「なあに、早苗」
「文月さん、今、大丈夫ですか? クッキー焼いたんですけどっ」
髪で、頭の両端からちょこんとひと房飛び出すように結わえている。待ちきれないように体を揺
らす早苗にあわせて、そのひと房が小動物の尻尾か、あるいは耳のようにぴょこぴょこと跳ね
ていた。
「そうね、いただくわ」
ノートパソコンを閉じて、文月は扉をくぐった。礼染女学院の寮は二人一組で使うが、一室
が三部屋に区切られている。それぞれの個室とダイニングである。簡易キッチンも用意されて
いて、早苗はここでお菓子を作るのが趣味だった。
「文月さんこないだの夜は忙しいみたいだったけど、少しは落ち着いたんですか?」
「そうね……だいたいの後始末も済んだし、もう、全部終わったと言ってもいいわね」
「そうなんですか。えへへ、なんだかわからないけど、無事にすんで良かったですね」
「無事に――」
その言葉に文月はくすりと微笑んだ。無事に。いったい、何に対してそう言えばいいのか。
糞尿にまみれて自己を否定した幸崎幸にか。
唯一の支えを破壊された月小路妃美歌にか。
「――そうね。無事にすんで、何よりだわ」
無事といえるのならば、あのクォーター、そもそもの発端の位置にいた伊勢宮アリス、彼女だ
けは無事だといえるかもしれない。文月は彼女に何もしていない。少し厳しい指摘をしただけ
だ。まさかあの程度で心が折られる人間などいまい。
正直、文月はあまり彼女に興味がない。芯の弱い人間はつまらないのだ。
「はい、クッキーと紅茶です。自信作ですよ!」
「ありがとう」
かわいい後輩の作ったクッキーを口に運びながら、文月はこの穏やかな生活をいとおしいと
思った。心のどこかで何かが唸り声をあげていたが、そんなものは気のせいだ。
復讐は終わった。暴れていい時間は終わったのだ。
だからこの獣は鎖につないで、眠らせておかなければいけない。
ことの終わりから二日を経て、文月は小さな幸福の中に、やっと復讐の完成を自覚した。
こうして、有瀬文月の短い復讐は幕を下ろした。
■■■
香堂智恵はその日、閑散とした放課後の教室で、一人本を開いていた。
読み始めると終わるまで止まらないのは彼女の悪い癖だ。どうしても続きが気になって、本を
閉じることが出来ないのである。それでも授業や用事があればそちらを優先させるが、今日は
もう帰るだけだ。ページが残りわずかということもあって、読みきってしまおうと考えたのである。
物語は終盤に向かって盛り上がっていく。結末まではもうあと少しだ。……と、そこで、はやる
気持ちを抑えながらページを繰っていく香堂の指がピタリと止まった。
「ああ、よかった。まだ残ってましたか」
教室の入り口に、見知らぬ生徒が立っていた。とっさにスカーフのラインを確認する。二本。
一学年上の先輩だ。
「香堂さん、よね?」
「はい」
間の悪いことに、自分に用事があるようだ。香堂はため息を飲み込んで本を閉じた。教室に
すたすたと入ってくる生徒は、背筋をピンと伸ばした凛々しい印象のある人物だった。本を鞄
にしまって、階段状になっている教室を前方へと降りていく。先輩は微笑みを浮かべて待って
いた。
「私のことわかるかしら。生徒会なんだけれど」
「ああ……」
言われてみれば、確かに行事のたびに壇上で見かける顔だ。しかし生徒会が何の用だとい
うのだろう。
なってその記録を外部にばら撒いた幸崎幸という生徒のことだ。
表沙汰にはなっていないはずのアレが、そして香堂自身は参加していなかったが、その後に
起こったはずの月小路妃美歌への報復が、問題になっているのだろうか。
「たいしたことではないのだけど、会長が呼んでいるのよ」
「会長が……」
相手の言葉を繰り返しながら、香堂は心中、そんなはずはない、とつぶやいた。幸崎も月小
路も事を公にはしていない。幸崎は出来るだけ平静を装って登校してきているし、月小路が
学校に来ないのはいつものことだ。復讐劇を計画した有瀬文月の言葉が正しければ、もう何
もかも終わっているはずなのだ。
「行ってもらえる?」
「はい」
断る理由はない。香堂は頷いて、生徒会役員だという先輩と連れ立って教室を出た。他に
も用事があるらしく、そこで先輩とは別れる。生徒会室までの道のりを思い浮かべながら、香
堂は廊下を歩き出した。
「何の用ですかね……」
件の復讐劇に関して、香堂の考えは他の参加者とは異なる。
そもそもの立案者である有瀬文月や、柚子澤蜜柑、逢坂仁和子などは復讐を楽しんでい
た。他者に暴力を加えることに、喜びを感じていたのだ。
香堂にもそれ自体を否定する気はない。ないからこそ、復讐に参加した。
だが、釈然としないものを抱えているのも、また確かだった。
かわいそうだとは思わないが、自分が手を汚している事実にいやなものを感じた。復讐という
名目で暴力を振るうことは、幸崎が自分にしたこととなんら変わりがないのではないかと、そう
思わないではいられなかった。
だから、彼女は月小路を標的とした復讐には参加しなかったのだ。
「そういえば、相田さんはどう考えているのかしら」
実行に際して、相田涼香だけは現場にいなかった。彼女が復讐についてどう考えているの
か、聞いてみたい気がした。
そんなことを考えているうちに、生徒会室の大きすぎる扉が目の前にあった。ご丁寧に用意
されているノッカーを叩いて、
「香堂智恵です」
と、声をかける。中からすぐに「どうぞ」と涼やかな声が返ってきた。
今の生徒会長は天王寺弥生という三年生で、文武両道の才女である。女系で有名な天王
寺家の三女であり、ずば抜けた才覚から家の今後を任されていると噂される。
女傑。そんな言葉が似合う女性である。
存在は知っていたが、面と向かうのははじめてだ。いささかの緊張を自覚しながら、香堂は
扉を開いた。
とたん、噎えた匂いが立ち込めた。
汗と、尿と、そして濃密な淫液の匂いが交じり合う、一度嗅いだら忘れることのできそうにな
い匂いだった。そう、実際香堂はこの匂いのことをよく覚えていた。
あの時、授業中のトイレの中は、この香りで満ちていたのだ。
「あ……ぅぁ……」
うめき声が聞こえた。ふらふらと室内に踏み入ると、背後でひとりでに扉が閉まる。重厚な大
扉はそれなりに大きな音を立てたが、香堂にそんなことを気にする余裕はなかった。
い。それ以外のどんな服も身に着けていない。十代の裸身をさらけ出して、時折ビクビクと痙
攣している。
口元には何か器具のようなものを噛まされて、こぼれた涎が絨毯を汚していた。股座には手
首ほどもありそうな巨大な筒状の何かが突きこまれて、処女でもないはずなのに血が流れてい
る。一歩近寄ると、重量に引かれて横に流れる両乳の先端に、ピアスのような物がゆれている
のまで見えた。
それは、明らかな陵辱の痕跡だった。
「あ……いだ、さん……」
ぐらり、と世界が揺れる。吐き気すら覚えた。
その名前を、香堂は知っている。相田涼香――計画に参画しながら直接的な報復には及
ばなかった、五人目の復讐者。利尿剤入りのジュースを幸崎に飲ませた、仕掛け人。
「な、なんで、こんな……」
声がふるえる。足もふるえている。報復だということは、すぐに思い当たった。だが誰が? 幸
崎幸にはできない。彼女の心は文月がへし折った。月小路妃美歌にはもっと無理だ。学校に
すら来ない引きこもりが、どうやってここまでいたぶれるというのか。
誰もいない。復讐は終わっている。報復に報復が返ることなど、ないはずなのに。
「当然の、結果ですよね」
この部屋に入室を促したのと同じ声が、そうつぶやくのが聞こえた。あわてて視線をめぐらせ
る。探すまでもない。彼女は香堂の真正面、部屋の奥、中庭の見渡せる大きな窓のそばに立
っていた。最初から、隠れもせずにそこにいたのだ。
「私たちに復讐した貴方たちなら、これを否定することは、できないですよね」
そこにいたのは、幸崎幸でも、月小路妃美歌でもない、そしてもちろん、この部屋の主人で
あり、香堂を呼びつけたはずの生徒会長でもなかった。
輝くような金の髪、吸い込まれるような碧眼。学院でも珍しいクォーター……
そう。
香堂の時にはいなかった、三人目の陵辱者。文月が唯一見逃した、かつて被害者だったら
しい誰か。
「香堂智恵さん。私は貴方に、復讐します」
伊勢宮アリスが、そこにいた。
■■■
終わってみればたった一日の復讐劇は、文月の生活に何も残さなかった。二ヶ月に渡った
陰湿な嫌がらせが消えたくらいで、文月は当たり前の顔をしてゆるやかな日常へ帰ってきたのだ。
一週間ほどの間を置いてそれとなく探りをいれてみたところ、アリスや幸崎はきちんと登校し
ているらしい。月小路は相変わらず引きこもっているようだ。
文月の行為が明るみに出ることはなかった。学院の性質はもとより、幸崎や月小路が外部
に漏れることを嫌ったのだろう。特に月小路は、ピアノが弾けなくなった、などと言えるはずもな
い立場にいる。
柚子澤や香堂とは、すれ違えば挨拶する程度の関係だ。そもそもお互い、会えば嫌な記憶
を思い出す。用もないのに顔をつき合わせても憂鬱なだけだ。
逢坂仁和子だけは持ち前の明るさでよく声をかけてくれるが、それもさほど仲が良いというわ
けでもない。そもそも学年が違う――彼女は中等部なのだ。
新調した携帯電話には、誰のアドレスも登録しなかった。
唯一の例外として、相田涼香とはそこそこに親密な関係を築いている。彼女は復讐に直接
参加しなかったこともあり、撮影したデータを肴に二人でこっそりとジュースで乾杯などしたものだ。
「……?」
だから、その日帰宅しようと開いた靴箱の中を見て彼女が眉をしかめたのも、無理からぬこと
だった。
靴はある。きちんと揃って入っている。問題は、その上に乗っているCDのケースだった。
あるはずのものがないということは以前ならばよくあったが、ないはずのものが入っているのは
これがはじめてだ。
「……ラベルはなしか」
透明なケースにおさめられているのは、どうやらDVDのようだ。白いレーベル面には何も書
かれておらず、市販されているデータ用ディスクであることが伺える。一応靴箱を確認するが、
自分のものだ。
ここでディスクを見ていてもはじまらない。文月はそれを鞄にしまうと、普段どおりの足取りで
昇降口を後にした。
文月は部活動に所属していない。純粋な帰宅部はこの学院では珍しいが、そんなことを気
にする文月でもないから、授業が終わればまっすぐ寮に向かうのが彼女の日常だった。だから、
彼女が寮に戻る時、中はほとんど無人である。この日もそうだった。
自室の扉を開けて、革靴を脱ぐ。ちゃんと鍵をかけてから猫のスリッパを取り出して、かわり
に靴を靴棚にいれる。靴棚には他に数足の靴と、ウサギのスリッパが入っている。
足が沈み込むような錯覚すらする絨毯を踏みしめて、文月は『ふづきさんのお部屋』というプ
レートのかかった扉の前まですたすたと歩いていく。早苗が作ったプレートに少し笑みを浮か
べて、扉を開いた。
無駄なものを極力省いたシンプルな部屋に入ると、文月はまず机の上のノートパソコンを開
いた。鞄をその脇に置いて、中からディスクを取り出す。本体脇のスイッチを押してトレイを引
き出すと、今は何も入っていないそこに白いディスクを置いた。
ヒュイィン、とスムーズな稼動音を立ててトレイが飲み込まれていく。しばし待つと、画面上に
ディスクの中身がフォルダとして表示された。
表示されているフォルダの中には、ふたつのファイルが入っている。どちらも動画ファイルの
ようだ。タッチパッドに指を滑らせて、文月はカーソルをうちのひとつに合わせた。
開く前にウイルスがないかどうかだけチェックする。手馴れた調子でスキャニングを済ませると、
文月は躊躇も好奇心もなく、いっそ事務的な調子でファイルを開いた。
自動で動画再生ソフトが立ち上がり、小さなウインドウが現れる。かすかに目を細めて、文月
は細い指先でいくつかのキーをタッチした。すぐにウインドウが全画面表示に切り替わる。
まず、ノイズが液晶を埋めた。それからわずかの間を置いて、映像が切り替わる。
どうやら室内らしい。しかし、解像度が低く粗い上に、やたらと上下に揺れていて、何が映っ
ているのかほとんどわからない。スピーカーから聞こえてくるのは何気ない雑談のように思える
……これは、校舎の中だろうか。
幾度か近い位置からささやきかわす声が聞こえた。どうやら撮影者の声らしい。そこでやっと
画面の揺れがおさまった。やはり校舎の、廊下のようだ。カメラは下を向いていて、見慣れた
絨毯と、上履きを履いた生徒たちの足がいくつか見て取れた。
休み時間か、放課後なのだろうか。
カメラの標的は目の前にいる生徒らしい。一体どういう方法で操作しているのか、足元から
ゆっくりとフレームをずらしていく。下から覗き込んでいるとしか思えないのだが、まさかそんな
真似を校内でできるはずもない。
ターゲットは黒いストッキングを着用していた。繊維が細かく肌に吸い付くそれを、カメラはの
ろのろと追っていく。まるで安物のAVのようだと文月は思った。さすがに、見たことがあるわけ
ではなかったが。
太ももが映し出される頃になって、標的となっている生徒のスカートが短いことに気がつく。
装に関して言えばそこまで自由というわけでもないはずなのだが。
そんなことを考えていた文月は、次の瞬間映し出されたものを見て、一瞬、かすかに眉を跳
ね上げた。
形のよい、丸いお尻。ストッキングによって形を整えられ、きゅっと引き締まったそれが、フレ
ームにおさめられている。やはり下から覗き込んでいる。何か器具を使っているのだろう。
短すぎるスカートの襞はかろうじてお尻の丸みを隠す程度で、あれではさすがに指導を受け
る。すこしでもかがめば下着が見えてしまう、そういう長さだった。
が、その心配はない。
その生徒はそもそも、下着なんてつけていなかったからだ。
「……よね、これは」
粗い画像にまじまじと目を凝らす。黒いストッキングなんてつけているものだから余計に分か
りづらいが、下着のラインが出ていない。どころか、繊維の奥には淡い茂みまで見える。
文月は一度、映像を止めた。
液晶を見つめる。気のせいかと思ったが、違う。粗い画像でも見分けやすい、白い楕円形の
何かが、ストッキングの向こう側で剥き出しの秘部に触れている。
ローターだ。
実物を、文月も持っている。指先でつまめる程度の小さな器具。女性が自身を慰めるため
に使う、電動式の玩具である。
軽い仕草で指を跳ねさせ、キーを叩く。映像が再開された。
よくよく耳を澄ませば、モーター音も聞きとれる。カメラはいたぶるように秘部を眺め回して、
更に上へと向かった。
礼染女学院はセーラー服だ。今は移行期間なので、夏服冬服の判断は各自に任せられる。
画面に映る生徒は夏服を着ていた。あるいは、着させられていた。
「つけてない……」
ぽつり、と文月はつぶやいた。薄手のセーラーは陽に透かされて、その奥にあるものをさらけ
出す。もちろん本当に透けているわけではない。だが、膨らんだ胸部の頂点で震える突起が
生地を押し上げるのはどうしようもない。うっすらと桜色が見えるのは、画面上の錯覚か、ある
いは単なる気のせいなのか……それとも。
更に、画面は上へ向かう。白い首筋はじっとりと汗に濡れていた。羞恥に耐えているのか、
悦楽を堪えているのか、その両方なのか。
震える顎、引き結んだ唇。形のよい鼻、その上に乗る眼鏡のブリッジ。
「……」
ここにきて、ようやく文月は映る人物の正体を知った。そして同時に、この映像の意味をほぼ
正確に悟った。
今にも泣きそうな顔で改造制服に身を包み、人のあふれる廊下で身を震わせているのは、
誰であろう、香堂智恵だった。
■■■
見られている。
事実はどうあれ、香堂智恵はそう感じていた。実際、廊下で談笑する生徒たちのうち何人か
は、過激すぎる香堂の制服に注目している。
黒いストッキングはいつもよりも肌の露出を少なくしているはずなのに、太ももを撫でる風がい
やに冷たく感じられた。短すぎるスカートをおさえる手がカタカタと震えて、掌にはじっとりと汗
が浮かび上がっている。
「いい格好ですね」
背後から、そう声が聞こえた。透き通るように美しい声だった。
「こ、こんな格好、」
声は、そう続けた。唇を噛んで、香堂は震える顔を前に向けた。
――生徒会室で相田涼香を発見した香堂は、選択を迫られた。この場で彼女と同じように
陵辱の憂き目に遭うか、それとも、とある格好をして校舎を一周するか。
香堂の脳裏に閃いたのは、かつて自身が受けた屈辱であり、そして幸崎幸に与えた暴虐だ
った。あんな思いをするのはもう嫌だ。
逃げる、という選択肢もないではない。だが、アリスが生徒会室を陵辱の舞台に選んだという
ことは、少なくとも生徒会のうち幾人かはアリスの味方だということだ。
そう、香堂を呼びに来たあの役員も、そうなのだろう。逃げ出しても意味がない――状況が
悪化するだけだ。
かくして、香堂は卑猥な制服に身を包むこととなったのである。
「それじゃあ、行きましょうか。ゆっくり歩くんですよ」
「……」
肩越しに、ちらりと視線を投げる。圧倒的優位な立場から香堂をいたぶっているはずの伊勢
宮アリスは、なぜか厳しい顔をしていた。緊張しているように見える。
「早くしてください」
促されるままに、香堂は歩を進めた。
「んぅ……」
一歩踏み出しただけで、自然と声が漏れた。秘部に埋め込まれたローターは微細な振動を
繰り返して、絶えず刺激を送り続けている。歩くだけで、その震えが倍増されて伝わってくるのだ。
体の中心を撫でるような曖昧な刺激は、しかし確実に香堂の官能を揺さぶっていた。
なるべく刺激を抑えるように、内股になってしずしずと歩き出す。訝しげな視線を何度か受け
たが、それ以上に注目してくる生徒はいなかった。『スカートが短い気がする』程度の違和感
なのだろう。まさかその内側で、ローターが暴れていることなど彼女らに知るよしもない。
「そんなにゆっくり歩いていたら、終わりませんよ」
「……ぅ、んぁ……」
ついさっきとまるで逆のことを言いながら、アリスがくすくすと笑った。ローターの振動がわず
かに強くなる。アリスが急かしているのだ。
歩く速度をあげようにも、少し大またになっただけでスカートの裾が気になって足が止まって
しまう。ストッキングを履いているから、遠目になら下着をつけていないことは悟られない……そ
う思っても、やはり大きな動きを躊躇してしまう。
そうしてまごまごと鈍重な歩みを続けるからかえって注目の機会を増やしてしまうのだ。
「ぅ、うぅ……」
じわじわと擦り寄ってくる官能の熱は、お腹の下の方にたまって全身を炙っている。微妙す
ぎる刺激はかえって自分自身の性欲を強く意識させる。体中の感覚が全て股間へ集まって
いくような錯覚すらあった。
「足が止まっていますよ」
「ひぁぅっ――」
思わずあげそうになった嬌声を、無理やりに飲みこむ。ローターからの刺激が、急激に強ま
ったのだ。
一気に最高値まで引き上げられた振動は、すぐにまたゆるやかに撫でさする曖昧なラインに
戻されたが、一度あげてしまった声は周辺の生徒たちの目を集めるのに十分すぎた。注目か
ら逃げるように、ひきつりそうになる足を懸命に動かして、香堂は廊下を先に進む。
「そんなにあわてなくてもいいのに」
急がせたいのかそうでないのか、アリスがまた矛盾したことを言う。
ほんの一瞬ではあったが体の中心を貫いた衝撃は、香堂の中にあるスイッチをいれるのに
十分だった。
少しずつ前に進むと、その度に秘唇をさする衝撃が強くなる。思わず太ももをすり合わせて、
そのはしたない仕草に気づいてあわてて前進を再開する――
「淫乱」
――それら一連の行為を見つめて、ぼそり、とアリスがつぶやいた。
「……ッ」
否定できない。吐く息すら荒く、頬の紅潮している自分が、何を言えるだろう。
息がおさまらない。今が冬だったら、口のまわりがずっと白くけぶっているだろう。熱を孕む吐
息が口の端から漏れて、それをこらえようと唇を合わせれば、口内にじっとりと唾液が溢れる。
涎を零しているのは下の口も同じで、汗と混じりあった濃密な粘液が股間からふとももまでをぐ
っしょりと濡らし、ストッキングの繊維を肌に張りつかせていた。
「はぁっ……は、ふ……」
右足を前に出す。ぐちゅり、という音が聞こえる。
左足を前に出す。にちゃり、という音が聞こえる。
「は……ぁ……」
気のせいだ。本当にそんな音が響いているわけではない。だが、一度頭の中で鳴りはじめた
淫音は、まるで香堂を煽るようにこだまする。
そうしてその音が響くたびに、体の奥の方で、何かがずぐん、ずぐんと蠢くのだ。股座から伸
び上がる性感は膣道を通って子宮に達する。そこで確かに、得体の知れない何かが暴れて
いる。
「ん……んふぁ……は、はぅ……」
ふとももをすりあわせながら歩く香堂は、自分が性欲をこらえるためではなく、貪るためにそう
しているのだと、うすうす気づきはじめていた。膝頭がこすれあうたびに大きくなる刺激が、香堂
を内側から破壊していく。尻を振りながら歩く姿がどれほどいやらしく惨めか、ちらちらとこちら
を伺う同校生たちを見ればわかりそうなものだ。
「とてもかわいらしいですよ。まさに、雌犬という風情で」
「は、ぅ……んぅ……!」
引き結んでいるはずの唇から、あえぎ声と一緒に涎が一滴こぼれた。あわてて口元をぬぐって、
「ぁ……」
掌についた唾液を見て、香堂は一瞬動きを止めた。
手を振って、また歩き出す。ぬらりと光る唾液は彼女の性を象徴しているようで、あげく香堂
はそれを『舐めたい』と思ってしまったのだ。
「ふ……」
ローターの刺激が少しずつ強くなっていることを、この時香堂はやっと悟った。弱い刺激を
延々与えているように思わせて、気づかれないようにリモコンを操作していたのだ。
「ん、んぁ……あふ……」
気づいてしまうと、余計にローターが意識された。脳裏に、かつて凌辱された記憶が蘇る。
泣いても叫んでも許してもらえなかった、あの地獄のような時間が。
視界がだんだんと曖昧になっていく。すれ違う生徒たちの顔がよく見えない。ここはどのあた
りだろう。廊下の景色はどこも似たようなもので、それが余計に香堂の理性を削り取っていく。
朧とした世界を漂うように歩き続ける。もはや明確な感覚は、股間を嬲る淫悦だけだった。
「香堂さん、止まってください」
唐突にささやかれて、香堂は足を止めた。現実から乖離していく香堂の意識は動きを止め
ても不明瞭なままで、ぼんやりと靄がかった世界を眺めるばかりだ。半開きの口元からは断続
的にあえぎ声が漏れている。かろうじて声を抑えているのが、ぎりぎり残された理性だった。
「ここには、誰もいませんよ」
「いくらでも、声をあげていいんですよ」
「あ……」
まるで催眠のように、アリスの声が忍び寄ってくる。綻んだ理性の隙間を通りぬけて、香堂の
内側を侵略していく。細く綺麗な指がそっと震える尻に添えられた。それだけで、香堂は背を
震わせてしまう。
「ほら」
短すぎるスカートの裾をくぐって、ぐしょぐしょに濡れたストッキングを撫でる。薄布一枚隔て
た感触が、優しくなだらかに、香堂を昂ぶらせる。
そうして、
「叫んで、いいんですよ……!」
小声でそういうと同時に、アリスの指が、ストッキングごと香堂の菊座につきこまれた。
「――っ」
声をこらえる。肛門から背筋を突き抜けた感覚は紛れもない快感で、曖昧模糊としていた香
堂の視界を真っ白に染め上げた。それでも嬌声だけはあげずに、天を仰いでぶるりと大きく震
える。
「叫んでいいと言っているのに」
呆れたようにアリスがそうつぶやいた。指が引き抜かれる衝撃にまた背を震わせて、香堂は
肺の奥から、大きく吐息をついた。予想外の強襲を乗り切った、安堵の吐息だ。
香堂は気づかなかった。
アリスは、その吐息を待っていたのだ。
「――ひぁああぁあああっ!」
ぐぢゅり、と膣内で響く淫音が、体の中で反響する。一度抜かれたはずの指は、一瞬の油断
に前に回りこみ、今度は疼く秘唇に突き立てられたのだ。
「あら、どうしたんですか、そんな悲鳴をあげて」
「なっ、中、な、なかっ、中に、入っ……あぁあああああっ!」
「何が、入ってるんですか?」
「ろ、ろぉっ、あ、ぁああっ、いやぁああっ!」
アリスが指を蠢かせると、狭い膣道で震えながら『それ』も身を捩る。そう、アリスの指はストッ
キングごと、その奥のローターまで、香堂の中に押し込んでしまったのだ。
最大値で震える淫具を埋め込まれた膣は、わななきながら未知の悦楽を吐き出していく。膝
が震えて立っていることすらできない。内側から送り込まれる刺激は、先ほどまでの比ではな
かった。
がくり、と膝が落ちる。同時にアリスの指が離れていくが、よほど奥までねじ込まれたのか、ロ
ーターは落ちてこない。膣の収縮運動でストッキングだけがゆるゆると吐き出されてきても、肝
心の玩具は唸り声を止めないまま、香堂の中で暴れて回っていた。
「はっ、はぁ、い、いや、やぁああ……」
両手を床の絨毯について、涙と涎を零しながら、香堂は立ち上がることができないでいた。よ
つんばいの姿勢で腰をひねりながら悶える姿は、どう見ても性を懇願するあさましい雌だ。
このローターをどうにかしなければいけない。そうしなければ、気が狂ってしまう。香堂は震え
る指を、自身の秘裂にそっと這わせた。布地に浸透した淫蜜に指先がぬめり、なめらかな繊
維の感触がふっくらとした土手を撫でる。這い上がる電流にも似た感覚に背を震わせながら、
香堂は指先を蠢かせる。しかし、ストッキングが邪魔をして秘所に指を触れさせられない。アリ
スがそうしたように、勢いよく突き込めばいいのだろうが、それでローターを取り出せるとは思え
なかった。
片腕を肘までついて、腰を振りながら秘所をまさぐる。これではただの自慰だ。それも校舎の
中で、まだ人がいるというのに。
「あ、ああ、ああああ……っ」
違う、ただローターを取り出したいだけだ。違う。違う。違うのに、布地ごしに暴れる指を止め
られない。
「あ、ああ、あっ、ああぁ、あっ……ふぁああっ、」
加減もなく掻き毟っていれば、当然ストッキングは伝線する。どころか、布を引き裂く音と共
に、香堂の指はついにストッキングを破ってしまった。涼やかな風が股を走り抜ける。その瞬間、
確かに香堂はつぶやいていた。
「さわれる、」
と。
「ふぁっ、ああああっ!」
何もかも振り切るように突きこんだ指は、剥き出しの淫裂を割り開いて膣口に突き立った。奥
に潜むローターの固い感触が指先にあたる。全身を衝き抜ける快感の波に流されるままに、
香堂はそのまま、指を思い切り深くまで突き刺した。
「んぁああぁあああああ――――っ!」
視界が白濁する。七色の光が真っ白の世界を飛び交って、香堂の体をどこか知らない場所
に連れ去っていく。今まで感じたことのない、全く知らない類の絶頂だった。
「あぁ、あ、ふぁ……」
指を抜くことも忘れて、ぐったりと弛緩する。床に頭をつけると、眼鏡が絨毯に触れてわずか
に音をたてた。
「……だ、大丈夫?」
――そこで、知らない声が聞こえた。
「……ふぇ……?」
顔をあげる。知らない女生徒が、心配そうにこちらを見下ろしていた。背後には何人かの生
徒が、気遣わしげに、あるいは気味悪げに香堂を見ている。その更に後ろからは、ざわめきと
共に野次馬の集まる音が聞こえてきた。
「あ……ぇ?」
振り返る。
伊勢宮アリスは、どこにもいなかった。
誰も来ないと言われていた場所は、確かに人通りは少ないがただの廊下の隅で、香堂自身
の悲鳴を聞いてだろう、多くの生徒がざわめきながら集まっていた。多数の視線に晒されなが
ら、香堂はよつんばいのまま、尻を高く掲げて上半身を地面に伏せた恥ずかしい姿勢で、自
分の指を股間に沈ませている。足元の絨毯は捩れて皺だらけになっていて、ここでさんざん悶
えたことを言外に示していた。
「な、なに、してるの……?」
指の行き先に気がついたのか、声をかけてきた生徒が顔を赤らめてそう言った。一歩退く彼
女に合わせて、ざわめきが波のように伝播していく。
「あ……あ、ああ、ち、ちが、ちがう、違う――あぁああっ」
あわてて起き上がるその勢いで、膣の中でローターがぐしゃりと押しつぶされる。密着した玩
具は電動式の愛撫を容赦なく香堂の体に刻み付けた。まなじりから涙を零しながら、香堂は
視線を巡らせる。少なくとも、この玩具の電波が届く範囲にはアリスがいるはずだ。
「う、うぅう……」
羞恥心だけを頼りに、香堂はふらふらと立ち上がった。一歩進むと、人垣がざわりと割れる。
二歩進むと、誰かが香堂の足元を見て、
「なに、なんか垂れてる」
「なにあれ、おもらし?」
「違いますよ、あれ、……その、あれじゃないですか」
「嘘、あの子、こんなところで何やってるの?」
「変態なんじゃないの」
ぼそぼそとした囁きが一斉に沸き立つ。中には香堂を弁護するものもあったが、とても耳に
入れている余裕なんてなかった。ローターは休まず動き続け、絶頂に達して敏感になった香
堂の性感を刺激している。どこかに隠れているだろうアリスは、笑っているのだろうか。
「うう、う、うぁああ……」
呻きながら、香堂はふらふらと廊下を、逃げるように歩いていった。ざわめきは収まらないが、
誰も追ってこない。ただ気味悪そうに、遠巻きに香堂を見つめているだけだ。
助けてくれる人などいない。
香堂はそのまま、人の目から隠れるように角を曲がると、一番近いトイレに駆け込んだ。気が
つけば、ローターの動きは止まっている。アリスから離れたのだろう。
「う、う、うぅ、うぁあ……」
汗が浮き上がった手を個室の扉にかける。それを開くと同時に、
「傑作でしたよ」
……この数十分でいやというほど聞いた、澄んだ声が響いた。振り返れば、かすかな笑みを
浮かべて、伊勢宮アリスがトイレの入り口に立っている。
「香堂さん、きっとマゾの素質があるんですね。かわいかったです」
「い、いせ、みや……」
「さあ、それじゃあ」
すたすたと歩いてくるアリスの腕が、香堂の肩をトイレの中に押し込んだ。同時に、また膣の
中でローターが蠢動を開始する。後ろ手にアリスが鍵を閉める音が、いやに大きく響いた。
「遊びましょう?」
微笑は美しかった。
まるで、悪魔のように。
■■■
映像が終わった。
液晶を見つめたまま、文月は小さく、しかし深い吐息を漏らした。最後にノイズになった画面
からは、悲鳴も嬌声も、もう聞こえてはこない。
「よくもまあ、大胆にやったものね」
あれほどの人数に目撃されては、口封じなど不可能だろう。いや……文月が知らなかったの
だから、ある程度はそれも成功しているのかもしれない。野次馬の生徒全員がアリスの協力者
という可能性もあったが、さすがにそれは考えすぎだろう。
だが、中に二、三人のサクラがいたかもしれない。
「そう……そうか……」
伊勢宮アリスという人間を計り違えていたのかと、文月は沈思する。彼女は戦える人間では
ないと思っていた。ただ虐げられ、搾取されつづける家畜のような、餌になるべき人間だと認
識していたのだ。
彼女は変わったのだろうか。それとも、最初から文月が間違っていたのだろうか。
「……」
文月は沈黙したまま、指先をタッチパッドに滑らせた。マウスカーソルをふたつめのファイル
に合わせ、ダブルクリック。
同じように再生ソフトが立ち上がるが、映像は流れなかった。シークエンスバーだけが横に伸
びている。どうやら音声のみのファイルらしい。
数秒の雑音の後、澄んだ美しい声が、さえずるように流れ出した。
まず、声はそう告げた。
『貴女がわたくしたちを許さなかったように、わたくしも貴女を許しません』
文月はかすかに目を細めて、シークエンスバーを見つめる。どうやらほんの十数秒の音声だ。
つまりこれは、宣戦布告なのだ。
『貴女の行為が復讐ならば、これも復讐なのだと――貴女には理解できるはずです』
「わかってないな……」
ぽつり、と思わず言葉が漏れる。自分ながら『らしくない』反応に、文月は自身の昂奮を悟っ
た。昂ぶっている。それは、知り合いのあられもない映像を見たからではない。
『貴女のいうような人間では、わたくしはない。わたくしは自分で、貴女に復讐できる』
これが昂ぶらずにいられようか。文月はぶるりと震えて、自身の肩を抱いた。
『これは、わたくしの復讐です……!』
言葉を最後に、再生が止まった。文月が止めたわけではない。これが収録されている音声
の全てなのだ。文月は震えながら、口元を掌で押さえて、
「くっ……あはははははっ……」
いつかのように、笑い出した。
「そう、そうなのね、貴女、私と戦争をしようというのね……!」
ぶるりと、また大きく震える。
早鐘のように打つ心臓が、脊椎を駆け上る快感の予兆が、文月の興奮を押し上げる。一度
は終わったはずの楽しい遊びの時間。鎖から解放された獣が雄たけびをあげる狩りの時間。
刹那の慰めだったはずのそれを、獲物の方から望んできたのだ。
昂ぶらずにいられようか。
これを、喜ばずにいられようか。
「ああ、そう、そう! それならばやりましょう。見逃すなんて失礼な事を言ったわね――」
興奮のあまり手を打ち合わせて、文月はつとめて声を抑えながら、うっすらと笑みを浮かべて
宣戦した。
「――潰してあげるわ、貴女も!」
伊勢宮アリスの復讐は、こうしてはじまった。
待ってたGJ
抜いてくる。
待ってたぜえええええええええええええええ!!!!!!
しかし、なんだ
文月とアリスじゃ器が違いすぎやしないかという気もしなくもないがw
アリスがどんだけがんばるのかが楽しみだ
文月は残酷であるだけでなく非情さも相当なもんだからねぇ
アリスなりに色々策を練るだろうが返り討ちにされて自殺ものの恥辱を受けそう
ふおおおぉぉぉぉっ!!!
アリスいい!敬語責めかわいい!
いじめる側もいじめられる側も見てみたい
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「【エロ小説・SS】超上流階級のお嬢様しかいない女子高に転入したら想像以上のイジメが待ってた・・・6発目」終わり
なんかおもろいやつやらなんやら
な、なんやこれ?
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名無しくんのそのまんまが出たぐっちょぐちょのコメント書いてけよ!
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ななっし 2018年01月27日 02:35:50
管理人修正乙
これ続ききになるほど面白いっすね
純粋なサドの文月と成長したアリス・・・これは胸熱ですわ
紳士な名無しさん 2018年01月28日 02:39:52
マジで読んだ甲斐があったわ。抜いてないけど。
作者様と紹介してくれたこのサイトに最大級の感謝を。
SSってだけで忌避してたらあかんもんだな
昔の、SFESってサイトが大好きだった頃を思い出した、ありがとう。
紳士な名無しさん 2018年01月28日 13:45:09
めっちゃ続き気になる……